2019年11月例会 『徴用工』問題では語られない『不都合な真実』―朝鮮植民地支配の歴史と実態―

11月16日に、弁護士の高崎暢(たかさき とおる)さんをお招きして例会を行いました。
いま、日韓関係の悪化が問題となっていますが、その根底にあるのが徴用工問題です。安倍政権は日韓請求権協定(1965年締結)で解決済みであるとして、韓国政府への批判を強め、メディアも嫌韓を煽っています。


10月14日に「3・1事件100周年ツァー」で韓国を訪問した高崎さんは、韓国の人たちは決して「No! Japan」ではなく「No! Abe」であることを実感したそうです。
韓国の日本大使館前で毎週水曜日に行われている「水曜集会」にも参加し、「ナノムの家」を訪問した際には日本軍慰安婦だった方から「なぜ安倍はまだ政権にいるのか」と問いかけられたといいます。


日韓請求権協定で決められた5億ドルの供与は現金で韓国に支払われたわけではなく、徴用工の人たちへの賠償も含まれていないのです。そして個人の請求権は消滅していないことはかつて日本政府も国会の答弁でも認めていたのです。それが2000年前後から、手のひらを返したように「解決済み」と言い出してきました。これはその時期、日本の裁判所で政府に不利な判断が出るようになったことに起因しています。


ことしの8月15日、韓国の「光復節」で文在寅(ムンジェイン)大統領は、「日清、日露、満州事変と、日中戦争、太平洋戦争にいたるまで、60年以上にわたる長い戦争が終わった。」と呼びかけましたが、日本政府は日本が起こした戦争と植民地支配にだんまりを決め込んだままです。


1910年、日本政府は、脅迫して韓国併合条約を押しつけ朝鮮を植民地化して以来36年に渡って抑圧してきました。朝鮮総督府を設置して専制政治を行い、朝鮮の人たちを無権利状態に置き、憲兵警察で弾圧しました。さらに「皇民化」政策で、天皇崇拝、神社参拝、朝鮮語の禁止、創氏改名、そして徴兵、徴用、「慰安婦」への強制などを行いました。

高崎さんは、こうした事実にきちんと向き合い、日本政府は韓国の人たちを工場や戦場に強制動員した歴史をきちんと認めて、徴用工の人たちの尊厳回復と賠償を行うべきだといいます。そして日韓関係改善への解決への道は「日本がまず加害の事実を認めること」、そして「話し合いのテーブルにつくこと」とお話されました。


最後に高崎さんは、ナチス政権下で行われたドイツ企業による強制労働被害者らへの補償を行うための基金、「記憶・責任・未来」基金について触れます。国家賠償ではないが強制労働の事実に真摯に向き合い、戦後、ドイツ政府と企業が基金に補償金を拠出しているといいます。
ドイツのヴァイツゼッカー元大統領の言葉「過去に目を閉ざす者は、未来にたいしてもやはり盲目となる」を紹介し、「諦めず声をあげていこう」と呼びかけました。

(「記憶・責任・未来」基金については、こちらをご参照ください。)

北海道社会保障推進協議会「笑顔でくらしたい」誌 (2020年2月号)に掲載された高崎暢弁護士によるエッセー「旅の時間 vol. 50 悪化する日韓関係のもとで」はこちらからご覧いただけます。

(徴用工問題について「イミダス」が前後編でわかりやすく解説しています。ご参照ください。)
  徴用工問題は本当に「完全かつ最終的に解決」されているのか(前編
  徴用工問題は本当に「完全かつ最終的に解決」されているのか(後編