2021年3月例会 「アフリカ、平和そして日本」

3月6日(土)団地住民センターにおいて、第81回例会を開催しました。
38名の市民の皆様にお集まりいただきました。

講演のテーマは、「アフリカ、平和そして日本」


お話は、北広島市内在住の医師で、余市協会病院 地域医療国際支援センターディレクターの武井 弥生(たけい やよい)さんです。
武井さんは、長い間アフリカを中心に現地の医療に関わってこられました。
医師としての数多くの経験とその中から見えてきたものなどを語っていただきました。


武井弥生さんは北広島で育ち、札幌の大学に進み、医師になりました。専門は熱帯感染症・自然家族計画・産婦人科です。1960年代の北海道では虫垂炎でさえも満足な治療を受けられずに亡くなることもあるという現実をなんとかしたいという思いとともに、シュバイツァーの活動などの影響もあって医師をめざしたとのことです。


大学卒業後、東京で医師として勤務する傍ら、山谷のドヤ街などでボランテイア活動にも参加されました。



リバプールに留学して熱帯医学を学んだ後、エチオピアのクリニックに勤務しマラリア・栄養失調・腸チフス・破傷風など様々な病気の治療にあたりました。薬が無くなっても補充ができずに患者に悲しい思いをさせたり、医療設備など無い地域の住居で出産に失敗して失禁状態が常態になった女性の治療などつらい経験もされました。また、当時のエチオピアは内戦中であり命の危険を常に感じながら、朝無事に目覚めたときの安堵感、また内戦後の無秩序状態の経験など様々なお話をされました。




その後、独立まもない東チモールでもマラリアなどの治療にあたり、日本では過去のものとなっている疾患や日本の衛生状態では見られないような症状の治療にも取り組みました。


その後、またアフリカに渡りタンザニアのクリニックで勤務されました。ルワンダ・コンゴ・ウガンダなどその他のビクトリア湖周辺諸国と比べると安定していたため、それらの国々から難民が流入し、難民キャンプでの活動も経験されました。また、現地の人の要望に応えて日本語を教える活動にも取り組まれました。




ウガンダではエイズが蔓延して非常に危険な状態にあったのが克服されたのですが、そこで「うなづき症候群」という病気に出会いました。日本に帰国したときにその病気についての学会が発足したのでそれに参加され、今後コロナ禍が収束したらまた現地で活動しようと考えていらっしゃいます。



また、アフリカのコロナ禍の現状については、致死率の低さの要因として、検査が少ない、若年人口が多い、BCG接種、交差免疫、移動の厳しい制限などが考えられているが、換気の悪い場所で「密」の状態になることが少ないことも考えられるのではないかとのことでした。

 

最後に、日本とは違う悲惨な現実が世界にはたくさんあるということ、また日本の食生活が発展途上国に支えられているという現実もある。特に後者については、農作物のプランテーションなどを考えると、私たちは経済的な侵略の当事者なのだという意識を持たなければとお話されました。



<参考情報>

武井弥生さんは、2019年10月12日、北海道大学医学部創立100周年記念講演会で講演されました。講演要旨が、「北大医学部同窓会新聞第 165号 2019年12月23日号 (6ページ~8ページ)」に掲載されています。こちら(☚click)からご覧いただけます。

武井弥生さんが上智大学総合人間科学部看護学科で教鞭をとっておられたときのエッセイがこちら(☚click)からご覧いただけます。北ウガンダ、グル地区にて「うなづき症候群」患者家族で立ち上げたCBO(Community Based Organization)のメンバーたちと一緒に撮った写真も掲載されています。(この写真は3月例会でのお話の中でも紹介されました。)

「うなづき症候群」についてのwikipediaの解説はこちら(☚click)からご覧いただけます。