2022年4月例会  「没後100年 知里幸恵の『アイヌ宣言』」

4月9日(土)団地住民センターにおいて、第84回例会を開催しました。
38名の市民のみなさまにお集まりいただきました。

講演のテーマは、「没後100年 知里幸恵の『アイヌ宣言』」

 今年は知里幸恵没後百年にあたります。「アイヌ神謡集」を編んで19歳で夭逝(ようせい)した知里幸恵について、松本 徹(まつもと とおる)さんにお話を伺いました。
 松本さんは高校教員を勤めた後、現在は登別の「知里幸恵 銀のしずく記念館」の運営に当たられています。



 知里幸恵は1903年登別に生まれて祖母と暮らし、その後旭川に移って叔母と暮らしました。その生活のなかでアイヌの口承文芸を受け継ぎました。口伝で継承されてきたアイヌ文芸を書き残すことが自分の使命と感じ、上京して金田一京助のもとで「アイヌ神謡集」を編みました。その序文の日付は1922年3月1日となっていますが、すでに病を得ており同年9月に亡くなりました。


 「銀のしずく記念館」は、旧土人保護法が廃止されアイヌ文化振興法が制定された1997年に、知里幸恵の姪にあたる横山むつみとその夫横山孝雄によって登別に設立されました。資金は国内外からの寄付で賄われ、今日までの運営も全国600人の友の会会費と入館料で賄われています。記念館では学校での学習の成果・写真のほか、両親への手紙、東京時代の日記、知里幸恵「ノート」などを見ることができます。


 2019年には「何人も、アイヌの人々に対して、アイヌであることを理由として、差別することその他の権利利益を侵害する行為をしてはならない」としたアイヌ施策振興法が制定されたものの、アイヌの先住権については何の規定もありません。北海道の「ウタリ生活実態調査」によればアイヌを自認する人の数は減少しており、それはアイヌ民族の消滅を意味するのではなく、自分がアイヌであることに沈黙する「サイレント・アイヌ」の増加を意味しているのではないかという指摘があります。


 作家の池澤夏樹は、記念館10周年の講演のなかで、「民族というのは人種ではなく、血でもなく、自覚です。」と述べ、文字を持たず口伝で継承されてきたアイヌ文芸の豊かさを指摘しました。知里幸恵は1922年7月12日付の日記に、自分はアイヌであり、そのことに喜びと誇りを持っているという「アイヌ宣言」を残しています。


 明治政府以来、この国の政策はアイヌの人々に対して同化と臣民化をもとめるものでした。今日、旧土人保護法は廃止されアイヌ文化振興法やアイヌ施策振興法が制定されたとはいえ、先住権は規定されていません。知里幸恵の願ったアイヌの人々がアイヌとしての誇りを持って生きていくことができる社会への道のりはまだ半ばと言わざるを得ません。

 

<知里幸恵 関連情報>

知里幸恵 銀のしずく記念館(☚click)

北海道公式観光サイト HOKKAIDO LOVE! (2022.1.1)
没後100年、知里幸恵に脚光再び 映画撮影本格化、著作多言語で公開(☚click)

NHK  (2022.1.19)
アイヌ神謡集の著者 知里幸恵の生家跡か 登別で見つかる(☚click)
(松本徹さんが「どこに生家があるのかは長年の懸案でした。没後100年で見つかったのは、すごくタイミングがよいと思います」とコメントされています。)

北海道新聞 (2022.1.24)
知里幸恵「アイヌ神謡集」の「序文」28言語に 3月、登別で翻訳資料展(☚click)

NHK (2022.3.1)
知里幸恵 100年前に込めた思い(☚click)