2019年9月例会 「なぜ記者は事実・真実を書かないのか」

9月7日(土)団地住民センターにおいて、31名の市民の皆さまの参加で、第77回例会を開催しました。

「なぜ記者は事実・真実を書かないのか」という衝撃的な演題でお話をしてくださったのは、元北海道新聞編集委員であり、現在もジャーナリストとして広く活躍されている徃住嘉文(とこすみよしふみ)さんです。


「もし、あなたが記者ならどう記事を書くか」と徃住さんは問いかけ、「あいちトリエンナーレ 表現の不自由展」中止という最近の話題などを例に、例会参加者から意見を聞きながら話を進めました。


ネットニュースの落とし穴、安倍政権のメディア戦略と報道各社の意識・構造の変化、また権力のメディア規制の動きなど、報道にまつわる危険な現状を記者ならではの視点でお話していただきました。 


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「安倍晋三だけは絶対に首相にしてはならない。あいつには人としての情がない。恥を知らない。」という後藤田正晴元官房長官(中曽根首相時)の言葉を紹介し、徃住さんは、「安倍政権はメディア戦略がうまいのではなく、ただの恥知らずだ」と断じます。
特に「首相の単独インタビュ―」における安倍首相の厚顔なメディア戦略は、報道に大きな打撃を与えました。それまで歴代首相が従っていた首相単独インタビューの順番は各社持ち回りとするという厳格なルールを安倍首相は一方的に平気で破り、以降、単独インタビューの争奪戦は、首相に取り入るジャーナリストとそれを厚遇する報道局という構図をつくってしまいました。「1・6・3K」(1:NHK 岩田明子、6:TBS 山口敬之、3K:産経新聞 阿比留留比⦅あびるるい⦆)と言われるものです.
(元TBS記者の山口敬之に関しては、伊藤詩織さん準強姦事件で、逮捕直前に中村格警視庁刑事部長⦅元 菅義偉内閣官房長官の秘書官⦆の一声で取りやめとなったとされ、安倍政権が警察の現場を指示できる力を持つことを知らされました。)


日本のリベラル系英字新聞であるジャパンタイムスは、「アンチジャパンタイムスでは存続できない」と安倍批判のコラムを書く記者を解雇することで首相単独インタビューを実現し、また、「徴用工」、「慰安婦」などの英語表現を政府寄りの表現に変更しました.


「あいちトリエンナーレ」では、その中止の理由として主催側は「ガソリンをまく」などの脅迫に対する「安全確保」を強調していますが、抗議・脅迫の理由は「平和の少女像」と天皇のコラージュの2作品に対するものが大半であり、調査中ですが、政治的な問題が絡んでいることがうかがわれます。

現在の報道は、問題のすり替えが疑われるところがあり、徃住さんからは、問題の核心は何であり、ジャーナリストとして何を伝えるべきかということを記者になったつもりで考えてほしい、またそういう目で記事をみてほしいとお話されました。


ジャーナリストは、権力のチェックがその大きな仕事です。しかし、現在、右翼等による激しい苦情や脅しの攻撃とそれを容認するかのような政府の姿勢により厳しい状況になっています。
これに対抗するには、ジャーナリストはタフな精神と勉強、時には命がけの覚悟が必要と言います。徃住さん自身も、脅迫や、車の窓を2回割られた経験があるということです。
私たち市民ができることは、いい記事があったら報道各社にメールやファックスなど形の残る激励を送ることです。それにより記者は仕事がしやすくなりますと徃住さんは語りました。


最後に、徃住さんは,ジャーナリスト同士、仲間の結束を深め、記者を孤立させず、権力の横暴からジャーナリズムを守る闘いをしなければいけない。沖縄のテントに書かれた言葉「勝つためにはあきらめないこと」を胸に闘い続ける決意を語っていただきました。


参考までに、ということで、現在問題になっている徴用工をめぐる日韓の関係悪化について「責任は全的に安倍政権にある」という浅井基文さん(外務省OB)の意見を紹介してもらいました。
韓国軍事政権下に取り決められた1965年の日韓協定のみを根拠に日本政府は、徴用工問題は解決済みとしています。しかし、その後人権に対する国際法上の認識は、20世紀半ばから21世紀にかけて大きく成長し、変わっており、それに基づいて各国が過去の植民地政策や強制収用について謝罪を表明してきています。
これに対し日本政府は、人権意識が未熟のままと言ってもよく、また、人権侵害についての個人請求権に関しては除外との約束も反古にするなど不実な態度です。



<HP担当者より>
国際的な視点で日本政府の言動をみることも必要であり、国際法上の観点から外れている時には反対の意見を表明していかなければ世界から孤立しかねないという不安を感じました。国際法上の観点を踏まえて、過去の過ちにきちんと向き合う態度がこそが必要なのではないでしょうか。
「最高の愛国心とは、あなたの国が不名誉で、悪辣で、馬鹿みたいなことをしている時に、それを言ってやることだ」(ジュリアン・バーンズ。1946年生まれ。現代イギリスの代表的作家の一人。)

【おわび と 訂正】
会場前面に掲示されている講師名が「徃住喜文」となっていますが、「徃住嘉文」の間違いです。