第14回総会記念講演 「中村哲さんから学ぶ 憲法 アフガニスタン パレスチナ」

 10月11日(日)芸文ホール活動室において、70名を超える市民の皆様の参加で、第14回総会と記念講演会を開催しました。

 記念講演の概要をご紹介します。

 昨年12月、中村哲さん銃撃のニュースは日本中に衝撃をもたらしました。
 繰り返される暴力による平和活動への妨害と奇特で多くの人々に尊敬されていた人材の喪失ですが、自らの命や利害を超えて他者に尽くす確かな存在への希望は冷めることなく、中村哲さんは今なお多くの人を惹きつけます。

 
 今回の記念講演は中村哲さんにも励まされながらパレスチナで医療奉仕団の活動を行っている猫塚義夫さん(パレスチナ医療奉仕団団長、医師)に行っていただきました。
 講演のテーマは、「中村哲さんに学ぶ 憲法 アフガニスタン パレスチナ」です。
 医療奉仕団結成にあたりかかわりを持った中村哲さんの人となりや思い出について、また、10年に及ぶガザ地区での活動経験からみたパレスチナ問題の現状についてお話しいただきました。

<中村哲さんのこと>

 
 中村哲さんは、地元では名士の生まれです。母方の祖父は、福岡で港湾労働者を組織した玉井金五郎さん、その長男は、金五郎さんをモデルにした小説「花と竜」などの代表作をもつ著名な作家火野葦平さんです。哲さんは、この祖父の気骨と、伯父の文学的才覚を譲り受けたのかもしれません。国情不安定なアフガニスタンで医療行為のみならず、井戸を掘り、用水路を引いて命の水の確保に奔走し現地の人に寄り添った中村さんは、信念を貫く行動派であり、同時に、人の心に響く、行動指針ともなるような言葉を数多く残しました。

 憲法9条についても、以下のような言葉を残しています。

 ・憲法は、我々の理想です。
   理想は、守るべきものじゃない 実行すべきものです。
 ・憲法9条は、近代の歴史を背負う金字塔。
   しかし、同時に「お位牌」でもある。
   平和憲法は、戦闘員200万人、非戦闘員100万人、戦争で亡くなった約300万人の
   人々の位牌なのだ。

 猫塚さんは札幌での講演会に中村哲さんを招き、直接その人格に触れ、中村哲さんの多くの言葉に強い影響を受け、それがパレスチナ医療奉仕団の活動の力となっていると語りました。


<ガザ「世界最大の天井のない監獄」とパレスチナ医療奉仕団について>

 イスラエルが、ガザ地区を「完全封鎖」して13年になります。札幌の1/3ほどの面積(360㎡)に200万人のパレスチナ人を押し込み、陸は境界に壁を張り巡らせ、上空と海側もイスラエルが支配しています。外部との連絡を絶たれ、物資の慢性的不足、とりわけ燃料不足による停電(通電3~4時間/1日)は深刻で、気温50℃に達する地で食物は腐敗し、汚水処理ができないため水質は悪化を極めています。パレスチナ人には軍法が適用され、軍などからの人権を無視した蛮行が常態化し、抵抗すれば刑務所行きです。貧困と失業、銃撃などの暴力による障がい者の増大に加え、麻薬の蔓延や身売りの現実もあります。

 2008年~2009年のイスラエルのガザ侵攻によるあまりの惨状を見かねて、猫塚さんは現地で医療支援を行うことを決意、2010年にパレスチナ医療奉仕団を結成しました。
 パレスチナ医療奉仕団の活動は、日本国憲法前文の理念に根差しています。つまり、全ての人が平等に人権を尊重され、平和的生存権が保障されることを目指す、それゆえに、非武装・非暴力の人道支援に徹していると言います。

 
 イスラエルは、ナチズムに共通する民族優位論、シオニズムに基づきパレスチナ人への殺戮、嫌がらせを執拗に続けています。パレスチナのゲリラ活動はあるもののイスラエルの過剰防衛は、その入植政策、分離壁の建設、一部占領とともに国際法違反といわれています。国際外交により、ガザの封鎖解除、国際法違反への適正な処断、パレスチナの国家承認などを行い、パレスチナ問題を解決に導かなければなりません。アメリカの動向は特に注目されます。国際世論を高めましょう。日本は、アメリカ追随型の親イスラエル政策をとり、イスラエルに軍事技術を輸出しています。

 パレスチナ医療奉仕団は、2015年から、子ども支援も始めました。生まれたときから戦時下にあるガザの子どもたちは、養育も教育ももちろん十分ではないからです。

 
 猫塚さんは、絶望と思える状況の中でも希望を抱いています。中村哲さんの「最初は小さなことでも継続すれば、現地の住民との信頼関係が生まれます。」の言葉通り、パレスチナ医療奉仕団は、その活動9年目にしてやっと、現地との信頼関係を勝ち得たということです。

 他人ごとではなく、自分事として、すべての人の人権問題として、「生活の1パーセントの関わり」を、と猫塚さんは最後に訴えました。

*講演資料はこちらからご覧いただけます。


(補足)

① 講演に先立ち、岡本哲軌さん(医学博士、北海道医療九条の会幹事)が行った講師紹介はこちらからご覧いただけます。

② 12月19日、札幌で行われる「没後1周年 Remember Dr.中村哲」講演会の案内と講演会開催に向けての「北海道パレスチナ医療奉仕団」猫塚義夫団長のメッセージはこちらからご覧ください。

③ ネット上でも中村哲さんの功績や活動について多くの情報があります。「九条の会」の呼びかけ人でもある澤地久枝さんが語った一文(前半)を紹介します。

   60万人を救った医師・中村哲さんがアフガニスタンに遺した「道」
   「水」を引いて60万人を救った人――昨年12月4日、アフガニスタンで武装勢力に襲われ
   命を落とした中村哲医師のことだ。中村医師が遺したものとは何だったのか。
   交友があるノンフィクション作家の澤地久枝さんがその功績を語った。