2023年10月 第17回総会 記念講演「戦争させない・しない世界と日本をつくるために」

 第17回総会で、札幌学院大学人文学部教授の川原茂雄さんに「戦争させない・しない世界と日本をつくるために ~攻められたらどうするではなく、攻められない平和のための準備を!」という演題名で講演していただきました。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 ロシアのウクライナ侵攻が始まり、国連は機能せず長期化しています。様々なメディアを通じて「戦場となったウクライナ」の光景をみて、以前とは異なって「戦争」がリアリティを持って感じられるようになりました。私たちは「自分の国が攻撃され、戦争が起きるかもしれない世界」にいるのではないか、そして「日本が他国から攻撃されたらどうする」ということがさかんに言われるようになりました。それに備えるために、軍事力の増強、敵基地攻撃能力・核共有の必要性、さらには憲法を改正しなければならないなどが声高に叫ばれるようになりました。


 しかし、他国より強力な軍事力を持てば相手は警戒して攻撃してくることはないだろうという「抑止力としての軍事力増強論」は本当でしょうか。こちらが軍事力を強化すれば、相手もそれに対して軍事力を増強します。結果として戦争の危機は高まります。「安全保障のジレンマ」です。にもかかわらず、日本国憲法前文・第9条の平和主義を「お花畑 論」と呼んで揶揄する声があります。中野晃一上智大学教授によれば、そのような人々は「素朴な武力主義者」です。「焼け野原 論」と呼ぶにふさわしいこのような考えを持つ人びとに対し、冷静に合理的・論理的に反論していかねければなりません。



 戦争には必ず理由・原因・プロレスがあります。本当に「日本が攻撃される」事態が起こるのでしょうか。まずそこを冷静に考えなくてはなりません。次に軍事力で他国の侵攻を防ぐことが本当にできるのでしょうか。四方を海に囲まれている日本に上陸艇で兵士・戦車を上陸させようとすれば多大な犠牲を覚悟しなければなりません。可能性が高いのはミサイル・爆撃機・ドローンによる攻撃です。その際、原発や核施設を攻撃されれば一巻の終わりです。日本は「攻められたらどうする」などではなく、「攻められたら終わり」なのです。


 そこで攻撃される前に攻撃するという敵基地攻撃能力が必要だといいますが、それは国際法が禁じる「先制攻撃」です。さらに、先制攻撃によって相手の軍事的能力を完全に無力化しない限り必ず反撃されます。結局、戦闘は長期化・泥沼化せざるをえません。したがって今私たちが考えなければならないのは「攻められたらどうする」ではなく「戦争が起きないためにどうすればいいのか」です。



 安倍政権以来、安全保障の名の下に軍事力増強路線が強化されています。安倍政権時代の安保法制に始まるとはいえ、岸田政権は防衛力増強・安保関連三文書改訂・武器輸出の動きなど、国会を通さず閣議決定によって軍拡路線を加速しています。
 一方で、軍拡・原発回帰のための財源確保など物価高騰に国民が苦しんでいるにもかかわらず、さらなる国民負担を押し付けようとしています。




 いま、日本が行うべきは「攻められたらどうする?」と言って日本国憲法の平和主義・第9条を変えて軍備を増強することではありません。立憲主義・民主主義を回復して偏狭な価値観・世界観を持つ政治家が権力の座につかないようにするとともに、国連を中心とする国際社会における平和のルールが回復されるための動きの先頭に立つことではないでしょうか。



講演レジュメはこちらからご覧ください。