2018年11月例会 「憲法の話」  3回連続講座 最終回 「日本国憲法の3つの特徴」


11月4日(日)団地住民センターにおいて、34名の市民の皆さまの参加で、第71回例会を開催しました。演題は、「憲法の三原則」で、「憲法の話」3回連続講座の最終回です。講師は、弁護士であり憲法応援団として活躍されている中村憲昭さん。弁護士になって18年になるという中村弁護士。憲法に興味をもったきっかけは、自分の名前の中に憲法の憲の字があるから、という自己紹介で始まりました。


講座のテーマである「憲法の三原則」とは、ご存じの通り「国民主権」、「基本的人権の尊重」、「平和主義」です。日本国憲法は、近代憲法の歴史の中で生まれ発展してきた「主権在民」、「人権尊重」の原理を含み、また、先の戦争への反省をもとに、「平和主義」の規定を持つことを特徴とした国際的にも先駆的な憲法です。しかしそれゆえに、理想主義的と言われることもあります。


憲法の構成は、明治憲法の改正という手続きで制定されたこともあり第一章に天皇の位置規定があり、第二章に戦争の放棄(平和主義)、第三章に国民の権利(権利規定)そして第四章以降に国会や司法などの統治規定が入ってきます。


第三章の国民の権利については、第13条の幸福追求権の条項を例に、誤解を受けやすい“公共の福祉”という言葉の解釈、そして戦前の大日本帝国憲法、さらに自民党改憲草案それぞれとの権利規定の書き方、考え方の違いについて詳しく解説してもらいました。

まず、第13条の“公共の福祉に反しない限り”という人権に対する制限は、例えば、「表現の自由」と「プライバシーの侵害」の対立にみられるように人権同士がぶつかる場合におけるその調整の意味合いでの制限と解釈されます。現憲法では、国に対し個人の人権は最大限尊重されるとしています。これに対し、大日本帝国憲法では、国民の自由や権利は国の決めた法律の範囲内においてのみ認めるとされていました。そして自民党改憲草案(2012年4月27日決定版)については、“公共の福祉”に対応する部分は“公益及び公の秩序”と変えられ、立憲主義に反し、国が国民に縛りをかけることができる表現となっており、時代に逆行しています。


次に、中村さんは第2章「平和主義」の大切さを訴えました。戦争は“究極の人権侵害”、 平和主義が崩れれば国民主権も人権の尊重も成り立たなくなることは歴史の事実が示しています。また、対外的にみれば憲法9条は、他国に軍事的緊張を高めないという効果を発揮し、東アジアの安全保障としての意味を持ちます。


憲法9条を骨抜きにしたいアベ政権は、憲法尊重擁護義務を負っているにもかかわらず、内閣を改憲派で固め、ネットメディアやSNSを使っての宣伝やフェイク、またメディアへの圧力、介入、懐柔、そして、「改憲ではなく加憲」や「おためし改憲」などと言い、あらゆる方法で改憲の動きを強めています。


最後に、中村弁護士は「護憲派は、護憲論をアップデートしなくてはならない」と言います。変える必要がないから変えない、大切だから守る、では改憲派に抗しきれなくなっていると感じています。理由の一つには、戦後日本の平和維持が安保体制に守られてきたという側面があり、この安保体制をどうするかをセットで護憲論を構築していく必要があると考えているということです。また、武力行使以外の国際協力のあり方を探っていく努力、そして若い人にこの様な問題をどう伝えていくかが重要、とのお話がありました。

講演資料は、こちら(☚click)からご覧いただけます。