2021年4月例会 「北広島からジェンダーを考える・動く・実現する」

4月10日(土)団地住民センターにおいて、第82回例会を開催しました。
35名の市民の皆様にお集まりいただきました。

講演のテーマは、「北広島からジェンダーを考える・動く・実現する」

 お話は、札幌のきたあかり法律事務所の弁護士、皆川 洋美(みながわ ひろみ)さんです。皆川さんはジェンダー問題にずっと関わって来られました。3月17日、札幌地裁で「同性同士が結婚できないことは法の下の平等を定めた憲法14条に違反する」との判決が初めて下された同性婚訴訟で弁護団の一員にもなっておられます。


 ジェンダーの問題・課題を、日本の状況を中心にわかりやすくお話していただきました。

 最初にセックスとジェンダーの違いを確認します。前者は生物学上の雌雄を示すものであり、後者は男らしさ・女らしさといった社会的・文化的につくられた性差のことです。
 考える入り口として、就職した自分の子どもが毎日愚痴をこぼしている場合、痴漢事件の場合、家事が苦手な女性と結婚した男性の反応などについて考えてみましょう。
 特に痴漢事件の場合、悪いのは加害者であるのに被害者の服装や行動に非難の声が上がることがしばしばある。これこそがジェンダーバイアス(男はこういうものだ・こうあるべきだ、女はこういうものだ・こうあるべきだ、という思い込み)の存在を示すもので、実は私たちが持っているものなのです。


 日本では、法律上は現在性差別は存在しないことになっていますが、実際に差別があることは珍しくありません。男女別定年制や結婚退職制度など裁判で争われたケースがありますが、司法判断で差別の不当性が認められるまで多くの人が「そんなもので仕方がない」と思っていた事実こそ、ジェンダーバイアスの存在を示しているのではないでしょうか。
 国際的に見た場合、約4年に1度の国連人権理事会のUPR(普遍的・定期的審査)で各国が自国と比べて他国の状況を審査するという制度がある。これによると、日本は他国より遅れているだけなく、過去10年間あまり改善が見られず取り残されていっています。
 また、世界経済フォーラムによるグローバルジェンダーギャップ指数では、2021年は120位、G7では最下位です。教育・医療の分野では評価が高い(とはいえ、この分野では諸外国も高いので特に差はない)が、政治・経済の分野では低い。特に政治分野では最下位グループといってもよいのではないでしょうか。
 もっとも、2016年のアメリカ大統領選時のヒラリー・クリントンの敗北のように、日本だけの問題ではないのですが。


 ところで、ジェンダー平等の実現を阻んでいるのは何なのでしょうか。
 国連でのエマ・ワトソンのスピーチでは、女性だけでなく男性も「男性はこうあらねばならない」という思い込みによって苦しんでいるということです。結局、「こうあらねばならない」と自分を苦しめているのは自分自身なのです。
 男性の育児休暇問題でも、いくら制度が整備されても実際にそれを利用する男性は極めて少なく、妻の職場復帰のために夫が育児休暇を取得すると、多くの人が違和感を抱くのではないでしょうか。
 結局、私たちの何気ない日常の会話や行動のなかにジェンダーバイアスは潜んでいるのではないでしょうか。まず、それに気づかなければなりません。自分の無自覚を自覚することが始まりです。そうでなければ、差別を再生産することになります。


 LGBTの問題については、ある調査によれば日本人の7.6%がそのような人たちだということで、少数とはいえ確実に存在していることを認めなければなりません。性的指向も性自認も自分で選ぶことはできないのです。人間としての尊厳は誰にでも認められなければなりませんから、性的マイノリティを否定することはできません。もし違和感を持つなら、まず自分自身に問いかけてみることです。自分のなかで「こうであるべき」と思っていたことを自覚的に問い直してみましょう。そして差別・偏見の再生産に加担せず、周囲との会話のなかで「自覚」を広げていくことです。



 

*講演資料はこちら(☚click)からご覧いただけます。

*世界経済フォーラムによる「グローバル ジェンダー ギャップ レポート」の日本部分はこちらからご覧いただけます。
(これは、Global Gender Gap Report 2021 | 世界経済フォーラム全文から、10ページ、18~19ページ、233~234ページを抜き出したPDFです。)

*国連でのエマ・ワトソンのスピーチに関する記事はこちらからご覧いただけます。

*5月13日の北海道新聞(北広島のページ)に「『同性カップルは普通』 弁護士が反差別訴え」という見出しで、当日の講演内容を紹介する記事が掲載されました。