2023年9月例会 「軍拡と原発回帰に抗って~私たちはどうする?」

 9月例会は、「軍拡と原発回帰に抗(あらが)って~私たちはどうする」というテーマで、戦争させない市民の風・北海道 事務局長の中村由紀男さんにお話を伺いました。
 中村さんは、東日本大震災で原発事故が起こった後、北海道長沼町に移住し、現在市民運動の先頭に立っていらっしゃいます。
 講演の概要をご紹介します。

 
 ウクライナ戦争が始まり、平和と生活を守らなければならないということがあらためて強く意識されます。戦争はいつも「防衛」の名の下に始まります。しかし、「抑止力」という威嚇によって本当に戦争を防ぐことができるでしょうか。「新しい戦前」ともいわれる状況のなかで、大軍拡と軍需産業への支援が進められようとし、大手メディアは委縮・御用化しています。


 軍拡のために社会保障が削減され、増税の動きが強まっており、戦前的家族観の押し付けや過度のナショナリズムも見られます。現実の政治は軍拡路線のみならず、インボイス制度やマイナンバーカードの導入や学術会議に対する圧力など強圧的な姿勢が目立ちます。その一方で、無為無策で高騰する物価、、「異次元」という掛け声だけで進行する小手先の少子化対策など、目に余るものがあります。


 私たちは、あらためて軍事力では平和をつくれないということを強く認識する必要があります。生活と政治は直結しており、自分事として日々の生活のなかから社会を見つめていかなければなりません。その指針となるのが日本国憲法です。また、奮闘しているメディアを応援することも重要です。


 原発問題については専門家ではありませんが、厚労省発表のデータをはじめ様々な資料を集めて、自分なりに研究してきました。その結果わかったのは、放射線の引き起こす健康被害はガンにとどまらないこと、内部被ばくの危険性、北海道で暮らす自分の周りにある園芸用の腐葉土からも放射性物質が検出されたことなど、数え上げればきりがないほどの問題があります。
 また、大地震発生帯でもある4つの大陸プレートの境界に原発が林立しているのは日本だけであり、核廃棄物の処分をめぐっても、日本学術会議が他の処分方法を提言したにもかかわらず、地層処分を急ぐのは不可解です。


 さらに、原発汚染水の海洋放出についても、各国の原発からトリチウムを含んだ冷却水が放出されているといいますが、事故による様々な放射性物質を含んだデブリに直接触れた汚染水が放出されるのは初めてなのです。(中村さんは海洋放出をしてはいけない理由を8点にわたって述べ、汚染水を増やさない対策について述べました。スライド資料参照
 原発はCO2 を発生させないといいながら、その燃料ウランの採掘から廃棄までには多くのCO2を発生させます。そして、原発の排水は海水温を上昇させ、CO2の吸収を妨げているのです。原発は、再エネ拡大の妨げになっているだけではなく、気候変動対策の妨げにもなっているのです。


 原発についても、自分事として周りの人々と学びあいながら、人類の負の遺産として、なくしていく運動を進めていく必要があるのではないでしょうか。

 当日のスライド資料はこちら(☚click)からご覧いただけます。(PDF 13.2MG)