2022年10月 第16回総会 記念講演会「分岐点としての2022年ーウクライナ、コロナ、7・8事件ー」

 10月8日、第16回総会を行いました。

 長年にわたり札幌で弁護士として活動してこられた高崎 暢(とおる) さんをお招きし、「分岐点としての2022年ーウクライナ、コロナ、7・8事件ー」という演題名で記念講演を行っていただきました。

 
 講演の概要をご紹介します。

 2022年は三つの意味で歴史の転換点といえます。
 一つは、安倍元首相銃撃暗殺事件(7・8事件)によって自民党と統一教会(勝共連合)との癒着が誰の目にも明らかになったこと。
 二つ目は、ロシアのウクライナ侵攻によって侵略戦争が現実のものとなったこと。
 そしてもう一つは、三年目を迎えたコロナ禍がこの国の社会構造の問題点を明らかにしたことです。 

 
 自民党と統一教会の関係は岸信介元首相以来の長い歴史があり、自民党の思想と統一教会の思想は反共をベースに共鳴しあってきました。それは自民党の改憲4項目(2018年)と統一教会の改憲案の内容を見れば明らかです。安倍元首相暗殺事件はそれを浮かび上がらせ、「パンドラの箱」をあけてしまったと言えます。
 この事件を機に様々な検証を行うことが必要ですが、岸田内閣にはその意思も意欲も手段もありません。統一教会の名称変更についても、行政がゆがめられた可能性があり、検証が必要です。
 それにもかかわらず、国民の多数が反対する中で安倍元首相の「国葬」が強行されました。

 
 ロシアとウクライナの戦争ではロシアの侵略に対し、ウクライナは正当防衛として抗戦していますが、戦争により市民の命を犠牲にしているのはウクライナも同じです。正当防衛の権利を行使するからといって個人の安全が増すわけではありません。軍備を増強して「戦争の準備はある」とアピールすれば国の安全が守れるという考え方があります。しかし、それは、彼らが「平和を唱え続ければ平和になると考えている平和ボケ」と呼ぶ言霊(ことだま)信仰と同じことです。専守防衛にとどまらず、先制攻撃も辞さずとして軍備増強に走るのはかえって戦争のリスクを高めます。


 コロナ禍を背景に、憲法には緊急事態条項が必要だとする意見がありますが、法律で対応できることをしなかった政治の責任であり、その条項がなかったからではありません。その条項が創設されれば行政が立法を担うことが可能となり、それは民主主義・立憲主義に反します。

 
 各メディアの世論調査を見ると、憲法を改正したほうがいいと考える国民が相当数いるように見えます。しかし、現在この国が優先して取り組まなければならないことを尋ねるとまず経済・社会保障などがあげられ、憲法改正という意見はごくわずかです。
 それにもかかわらず、国会では憲法改正を唱える勢力が三分の二を占め、歴史上最も危険な憲法状況となっています。

 

 こういう状況の中で、私たちの草の根からの運動が必要ではないでしょうか。憲法改正を主張する人たちにも憲法を守り活かす考え方を届けていきましょう。
 また、国政選挙においては市民と野党の共闘の働きかけが重要です。憲法改正ではなく、日本国憲法の前文や9条に示された理念の実現こそが喫緊の課題です。